原爆のキノコ雲を、なんと下から見た松本正さんの描写です。
“真っ青な天空に向け、高く高く伸びていく太い雲だ。その勢いに上空の絹層雲が圧倒され、サーッと道を譲るかのように離れていきます。”
「ピカで犠牲の声聞こゆ」より
14歳の松本少年は、軍需産業に駆り出されたものの、身体が弱かったために工場での労働はさせてもらえず、ひたすら防空壕を掘る作業に従事していました。そのため原爆の閃光が走った瞬間、松本少年は防空壕に身を隠す事ができました。
やがて視界が戻り防空壕を出ると、同級生が働いていた工場は大破し、死んでいる人には割れて飛散したガラスが突き刺さっていたそうです。
生存者は家に戻るように命令されたのですが、疎開先の関川というところをGoogleマップで調べると40キロ弱はあるようです。
助けを求める人々の叫びや、連れて行ってくれと足を掴む人々に謝りながら家路を急ぎ、黒い雨を凌ごうと雨宿りすると、無傷な事を責めるかのような言葉や視線を浴びせられましたが、それらを耐えながら疎開先まで戻る事ができました。
松本少年が利用する芸備線は、火災から列車を守るためにも鉄道員が列車を走らせていて、無事に電車で戻る事ができたのです。
松本さんは恐ろしい記憶と無傷なのに人を助けなかった罪悪感から、80歳になるまで原爆の体験を話せなかったそうです。
しかし、松本さんが奇跡的に生き残ったことと、今この時代に本を出されたことには深い意味があると思います。
なぜなら、松本さんが無傷だったのは、今この時代の人々が、自分に近い状態の人の証言として原爆の体験を聞くためだと思ったからです。
怪我をされていたり、後遺症に苦しまれていたりしていなかったからこそ、松本さんの経験を聞いたり本で読んだりすると、リアルに追体験できるのです。もし、今の自分が爆発直後の三菱の工場にいたとしたらと。
今、日本はまた戦争に引きずり込まれようとしていて、それは近いと考えています。
戦争をさせたいのは一部の人だけで、ほとんどの人は戦争なんてしたくありません。
しかし、戦後日本人は政府の言いなりに動くように教育されてしまったようです。
戦争に誘導されないために戦争の悲惨さ、愛する人を亡くした家族の辛さを、我がことのように感じるまで向かい合う必要があると思います。
中東では劣化ウラン弾が使われ、土地は核汚染されているので、どうやら武器を売って金儲けしたい人間たちは何も反省していないようです。
武器商人と金で動く政治家と嘘で誘導するテレビや新聞。今の日本の政府は腐り切っています。
対抗するには一人ひとりが「戦争は嫌だ」と強く思って行動するしかありません。
「ピカで犠牲の声聞こゆ」 松本さんの耳には今でも原爆で被害を受けた人々の叫びが耳に残っているのでしょう。
自分や家族が戦争に巻き込まれるのを拒むなら、松本さんのような体験者の話に耳を傾けて戦争の悲惨さを知り、政府には毅然とした態度で戦争反対を言っていかなければいけないと思いました。
この本は2024年8月に発売され、出版社から直接購入する事ができます。